第51話

相手は単なるカツアゲの不良グループだし、帰り道を少し変えれば待ち伏せされてても問題はない、そこまでしてもらう必要は全然ない……とは思うんだけど。


でも私にはこの猪熊さんの精一杯の譲歩を、簡単に突っぱねる事は出来なかった。


私は猪熊さんの整ったイケメン顔を見上げる。


猪熊さんがちょっと困った様な柔らかい笑みで私を見返した。


しょうがないなぁ。


猪熊さんの為だ。


思いながらも私は──私も猪熊さんにちょっと困った笑みで返して 分かりました、と告げた。


「それじゃあ猪熊さん……家まで、よろしくお願いします」


私の言葉に──猪熊さんがホッとした様に爽やかな笑みを見せた──。

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