第50話
言うだけ言って、私は一つペコリと頭を下げて猪熊さんやリムジンの横を通り抜ける。
そうしていつも通りの帰宅路を歩き始める──と。
その後ろから、猪熊さんが少しの間を置いて追いかけてきた。
……うぅ……。
お願いだからこのまま行かせて頂戴よ……。
思いながら、こっちだって困り顔で猪熊さんを振り返る……と。
どうやら私の心の声に気づいてるらしい猪熊さんが、申し訳なさそうに小さく苦笑して言う。
「……ではせめて私にお送りさせて下さい。
昨日、幸右様から不良グループを撃退して戴いたと伺っております。
昨日の今日ですし、もし万が一有馬様を待ち伏せでもしていましたら大変ですから。
リムジンでは目立ちすぎる様ですから、せめて家まで、私が帰り道のお供を致します」
どうやら……私のわがままに付き合って、猪熊さんも歩いて供をしてくれるって、そういう事らしい。
たぶん……これが猪熊さんの精一杯の譲歩なんだろうなぁって、そう思う。
私が『リムジンに乗って目立っちゃうのが嫌だ』って思ってるって事も、ちゃんと分かってくれてる。
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