第47話

◆◆◆◆◆


その日の最後の授業が終わった、そのベルの音に合わせて。


私は待ってましたとばかりにサッとカバンを持ちながら立ち上がって、誰にも何も声をかけられる間も作らず素早く教室を出る事にした。


後ろから万亀が「あっ、瑠衣さん……」と声をかけかけたよーな気もするけど、もう気にしない。


まだほとんど人気のない廊下を足早に通り抜け、階段を降りて靴箱の前まで行く。


(たぶん)校内の誰よりも早く靴を履き替え表に出た。


そーして校門の前まで辿り着いた──所で。


で〜んと道を塞ぐ様に……黒くて長い車体が、校門前に陣取っているのを見つけた。


今朝私とお父さんが乗せてきてもらったのと同じ、リムジンだ。


その証拠に車の前にはある一人のイケメン執事が立っている。


この執事さんも、朝と同じ。


確か──猪熊いのくまさん、とか言ったっけ?


イケメン執事の猪熊さんは私の顔を発見するとにっこりと温和な笑みを浮かべる。


「有馬様。

お迎えに上がりました」


言ってくる。


私はそれに、思わず目をぱちくりさせて猪熊さんの顔を見た。


「お迎えって……万亀ならまだ校内にいるわよ。

たぶん、しばらくしたら出てくると思うけど……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る