第44話

「ねぇねぇ、有馬さんって子の事が好きって聞いたんだけど、それって本当?」


そう──言ったのは、どう見てもうちのクラスの人ではない、女子の一人だ。


そしてその女子の取り巻きにはまた、二人の女子がくっついていて、万亀の答えを待っている。


どーやらこっちには気がついてない雰囲気だから、万亀の隣の席に座るこの私がその噂の『有馬さん』だとは気がついてないみたいだけど……。


だけど、どうしてもう他のクラスの人にまでその話知られてるのよ……?


思いつつ、私はそそくさとさり気なく席を立ち、そのままそろそろと教室を出ようとする。


まだ休み時間が終わるまでには時間もある。


このままトイレにでも行って、ちょっとばかり中庭とかどこか人気のないところでのんびりして、それで帰ってこよう。


席を立った私には、もちろん気づいたでしょう。


万亀はだけどこちらを呼び止める事はせず、だからといって話を取り繕ってくれるでもなく、言う。


「うん。本当だよ」


言った爽やかな微笑みが、ものすごく想像出来る。


私はでもそれ以上の話を聞く事もせず、そちらに背を向けたままそそくさとその場を立ち去ったのだった──。

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