第39話

冬馬は半身だけで万亀を振り返ったまま、ものすっごく不機嫌な目で万亀を睨みやり声を上げる。


「さっきから聞いてりゃべらべらべらべらとうるっせぇんだよ。

金持ちのボンボンだかなんだかしんねぇけど調子乗ってんなよ。

瑠衣が困ってんのが分かんねぇのかよ」


ちょっとだけ男気溢れる感じで、冬馬が言ってくる……けど……。


それは一瞬の事だった。


冬馬の机のすぐ横に立って万亀に寄り集まってた女子の一人が、冬馬のさっきの机ドン顔負けのものすごい一打を、冬馬の机に振り落とす。


ドンッ、ともバンッともつかないものすごい音が、教室中に響き渡った。


教室中がし〜んとしたのは、言うまでもない。


その一打を繰り出した女子は──鬼だって逃げ出すほどの鋭い睨みで冬馬を見て、口を開く。


「──尾瀬くん。

さっきから万亀様に失礼じゃないの?」


万亀──様。


様って呼んだわよ、今。


私の頭の奥底の冷静な部分がそんなツッコミを入れてくる。


冬馬は「ああん?」と一回はこっちもガラ悪く返していたけど……万亀様呼びした女子と、その周りを囲んだ女子に一斉に睨みつけられて、かなり怯んだみたいだった。

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