第17話
「ところで。
まだ時間もかなり早い様ですし、有馬さんに校内を案内してもらおうと思うんですがいいですか?
手続きは全てうちの執事がさせて頂きますので」
私にも執事さんにも了承を得ないで、勝手にうきうきとそんな事を言う。
校長はしかも笑顔でそれに応じて見せた。
ただし、ほんの一瞬、ほんのわずかに片方の眉がピクリと動いたのを私は見逃さなかった。
それがどういう反応なのかは分からないけど……あまり良さげな反応じゃない事だけは確かね。
案の定、
「構いませんよ。
ですがうちの教頭先生が校内の案内をさせてもらうはずだったんですが……」
やんわりと、私に案内させるより教頭に案内させたいって言っている。
けど。
それに対するナキリも大したもんだった。
「──大丈夫です。
教頭先生のお時間を煩わせる程の事ではありませんから」
この『大丈夫です』には、有無を言わせない雰囲気がある。
あっさりさっぱり、しかも笑顔で言った一言なのに、相手はそれ以上何にも言えなくなってしまう、そんな『大丈夫』。
校長と教頭は──ほんのちょっとどうしたもんかとお互いに顔を見合わせた……けど。
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