第16話

思いつつも……お父さんの性格をよく知ってる私は、この瞬間を一番早く終わらせる方策を取る事にした。


どうせ無視しててももっとうるさくなるだけなんだから──。


お父さんがさっさと満足して去っていってくれる様に、満面のかわいい笑みを浮かべて、


「行ってらっしゃい」


そう、一言だけ言ってあげる。


案の定お父さんはそれに大満足したらしい。


大人しく(?)うれしそうに手をひらひら振る中──リムジンの窓が自動で閉まっていく。


たぶん、運転手さんがタイミングを見て閉めてくれたんだろう。


運転手さん、本当にご迷惑かけてごめんなさい……。


心の底から謝りつつ、私はイケメン執事さんが持ってくれている私のカバンへ何となく目を向ける。


ここで受け取っておかなくっちゃね、と私自身すらハッキリ思ったか思わなかったか分からないくらいのその一瞬に、ナキリは気がついたらしい。


執事さんに向かってやんわりと言う。


「猪熊(いのくま)、瑠衣さんのカバンは教室の方に頼む」


「はい、かしこまりました」


間髪を入れず、イケメン執事──猪熊さんがナキリの声にそう答える。


ナキリはそのまま校長に向かった。

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