第10話

私のカバンもイケメン執事によってリムジンの中に消え、お父さんは何の躊躇いもなくさっさとリムジンの中に入っちゃってる。


後ろできゃあ〜っとお母さんが(おそらくは私に手を差し伸べてきたナキリに)黄色い声をあげる中──ナキリは私ににっこり微笑んだまま言う。


「行こう」


………こんなの、絶対に断れやしないじゃない。


まぁ確かに断る理由もないし、ありがたく乗っていけばいいんだろうけど。


なんか……釈然としない様な……。


「お〜い、瑠衣、遅いぞ〜。

お父さん会社に遅れちゃう」


お父さんがリムジンの中から顔だけ出して子供みたいに文句を言ってくる。


私はそれに盛大に溜息一つついた。


隣のイケメン執事がほんのちょっと苦笑したのもしょうがないと思う。


私は──自分の前に出されたナキリの手を見る。


さすがに──これを無視っていうのも、若干気が引ける。


仕方なくナキリの手を取ってリムジンに乗り込む事にした。


そうしながら──ふいに最大の疑問が浮かんで、ほくほくとうれしそうにしているナキリに問う。

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