第9話

「僕もお父さんとご一緒出来てうれしいです。

さあ、どうぞお乗りください」


「そーかい?悪いねぇ」


な〜んて言いつつ、ちっとも『悪い』なんて思ってないのは見え見えだ。


私が思わず落としちゃった荷物をイケメン執事が拾って、持ってくれている。


ちょっと待って、ちょっと待って。


これってもう完全にナキリのリムジンに乗ってく流れじゃん。


お母さんの話じゃ昨日の件があるし娘さんの行き帰りが心配だろうからって話だったけど、フツーに大丈夫だから。


行きも帰りも陽が明るいうちに帰ってくるし、(昨日は偶然河川敷を歩いてたけど)ちゃんと人通りの多い安全な通りだって知ってるし。


こ〜んな高級車で学校まで送ってもらう義理なんかないって!


しかも父まで!


と、ツッコミどころ満載な私に、ナキリがにっこり微笑んでくる。


その微笑みはまるで絵に描いたみたいにイケメンだ。


くっ……昨日は不良達に囲まれて「ひぃぃ」な〜んて声を上げてたのに、いきなりイケメン風を吹かせてくるなんて反則だ。


しかもお嬢様とかお姫様にするみたいに、車に乗るのに手まで差し伸べてくる。

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