第8話
◆◆◆◆◆
さて、支度を済ませ、その噂のリムジンとやらの前まで来た私は──思わず目を大きく丸く開けて、手に持っていた荷物をその場に落としてしまった。
うちの目の前に、見たこともない高級な感じの黒くて長い車が止まっていたからだ。
しかもピカピカ。
朝日に照らされて、光を反射したりしてる。
うちの車みたいに雨の後放置しちゃったみたいな雨垂れの一つもない。
リムジンの前には一人の執事らしいカッコイイ若い男の人がいて、丁寧に(この私に!)一礼する。
そしてその横には……パタパタッとうれしそうに私に手を振る、昨日見知ったばかりの男──。
「瑠衣さん、おはよう!」
言ってくる。
きれいな顔立ちに、意外に高い背丈。
確かに昨日、どっかのお坊ちゃんって感じの雰囲気だって思ったけど……。
こいつ、本っ当にお坊ちゃんだったんだ……。
呆然とするばっかりの私にナキリがもう一つ「おはようございます」と私の後ろへ向けて声をかける。
は?
私の後ろに向けて?
不審に思って振り返るとそこにはリムジンに目の眩んだ(いや、リムジンに目を輝かせた?)うちのお父さんの姿がある。
しっかりと出勤の支度を済ませきった状態で。
お父さんがにこやかに「おはようございます」とナキリに挨拶する。
「いやぁ、娘だけじゃなく私まで会社にリムジンに乗せてってくれるとは、父は感激です。
今日着いたら会社中の話題の的になってしまうなぁ」
るるんとうれしそうに頭を掻きながらお父さんが言う。
ナキリは朗らかにそれに応じた。
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