第6話

お母さんがいちいち『リムジンの方』の口真似らしい感じを織り混ぜながら、言ってくる。


私はもそもそっとして布団から顔だけ出し、ぼんやりと部屋の時計の針を見た。


──6時15分。


私が普段起きるのは7時なんですけど。


ちょっと早すぎる。


もうちょっと寝かせてよ。


思いながらまた布団を被って寝る態勢に入ったん……だけど。


バッとその布団をお母さんに引ったくられた。


「さっさと準備する!」


言われて……私は「ううぅ……」と思わず呻いた。


っていうか、リムジンがどうとかこうとか……お母さん寝ぼけてんじゃないの?


うちにそんないかにもな高級車が止まる訳ないじゃん。


しかもよりにもよって、ただの高校生な私を送ってくれるって。


新手の詐欺とかじゃないの?


乗ったら最後、どっか見知らぬ土地に売り飛ばされちゃうんだとか。


誘拐されて、身代金とか要求されちゃうかも。


ぼんやりとそんな事を考える。


大体、冷静に考えて学校に行くには早すぎでしょ。


うちから学校までは歩いて約20分。


車で行ったら10分くらいで着いてしまう。

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