第3話

一瞬その内の一人は私からブザーを奪い取ろうって考えたみたいにこっちに足を踏み出しかけたけど、私が鳴り続けるブザーを思い切り遠くの茂みに投げ込んだからか、思い留まって逃げる方向にシフトしたみたいだった。


「逃げろ!」「ヤベッ!」


と声を上げながら不良達が逃げていく──やれやれ。


河川敷の上道に、人だかりが出来つつある。


私は不良達が十分逃げ切ってもう戻ってこなさそうなのを見て取って、茂みに落ちたブザーを拾いに行く。


丁度その間にブザーは止まったんだけどね。


ありがとう、防犯ブザー。


あんたは私のヒーローよ。


密かにそんな事を思いつつ、私は壁に背を預けてその場にへなへなとへたり込んでしまった男子学生の元まで戻って手を差し伸べてやる。


「大丈夫?」


問いかけると男子学生が私を見て──電撃を打たれた様にそのまま止まってしまった。


まるで一目で恋に落ちちゃった、みたいなそんな顔。


まぁ、この私の可愛さを目の当たりにしちゃあ誰だってそうなっちゃうわよね。

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