第4話
うんうん、分かる分かる。
男子学生は私の手を取り、立ち上がる。
立ち上がってみると、意外と背が高い。
顔立ちもきれい。
整ってるっていうのかな、品のある、どっかのお坊ちゃんって雰囲気。
「……ありがとう」
素直にお礼を言ってくる。
私は笑顔でそれに請け負った。
「どういたしまして。
あいつら、何人もで寄ってたかって卑怯よね。
念の為、人通りの多い所を通って帰った方がいいと思うわよ。
それじゃあね」
それだけを言って、にこっと笑ってそのまま帰途につこうとした私の背に──
「〜あの!」
男子学生が私の背に、声をかけてくる。
私が半身だけで振り返ると、その人は言う。
「俺、ナキリっていいます。
ナキリ コウ。
お名前を伺ってもいいですか?」
ナキリ コウ、だって。
どんな字を書くのか分からないけど、珍しい苗字ね。
しかも見た目印象では一人称は『僕』かと思ってたのに、『俺』だったのもちょっと意外。
思いつつ、私は笑顔で答える。
「有馬 瑠衣(るい)っていうの。
見たところ同じ高校みたいだし、そのうちまた会うかもね。
その時はよろしく」
どうよろしくするのかは分からないけど、まぁただの挨拶よ。
私はひらひらっと手を振って、今度こそ帰途につく。
まさか、そのたったそれだけだった出来事が後々あんな大事になってしまうなんて……この時の私には知る由もなかった──。
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