第93話

丁度こっちに背を向ける形でカウンター席の端に座ってた男が声を上げる。


「──自分の仕事も満足に出来ねぇ輩が他人の仕事の世話ってか。

結構なご身分だ」


その挑発的な物言いに、ラビーンとクアンがグラサン内部からギロッと横目に男を睨んだ。


俺は──その一部始終を見ながら、ただの一歩も動けずにいた。


この世にあんな趣味の悪いアロハシャツを着た中年男が他にいるとは思えねぇ。


カウンターについた手に じゃらりと はまるたくさんの宝石付きの指輪も然り、だ。


ダルがきょとんとした目を男に向ける中……ラビーンのバカが男に食ってかかる。


「あぁ?何だと、コラ。

部外者がごちゃごちゃ口出ししてんじゃねーぞ」


「そーだそーだ!

おっさんはすっこんでな!」


クアンが乗っかる様にカウンターにドンッと手をついて言う。


店がにわかにざわつき始めた。


俺はその様子を……どうしようもなく固まったまま見つめていた。


男がクアンとラビーンの言葉にハッと大きく鼻で笑う。


そうして余裕しゃくしゃく でラビーンとクアンの方へゆっくりと顔を向ける。


とたんに。


調子に乗りまくってたラビーンとクアンの顔からさぁ~っと血の気が引いた。

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