第88話

中からダルの声がする。


「──ネズミやリスを、ただ追い払うだけなのに6万2千ハーツ?」


疑わしそうにダルが言う。


それに答えたのはラビーンだ。


「ああ。

オーナーの言うコトにはな、『食いモン出す店でネズミやらリスやらにウロチョロされたんじゃ商売上がったりだ、確実に奴らを追い出せるなら6万2千ハーツは安い依頼料だ』ってよ」


まぁ確かに、噂が立って店が潰れでもしたら6万2千ハーツどころの出費じゃ済まねぇだろう。


店員の手が足りねぇくらい人気のカフェ、なんだろうしなぁ……。


俺は一人(と犬カバ一匹、か)ドアの外に突っ立ったまま眉を寄せて目を天井へ向ける。


クアンとラビーンが“リアの為に”持ってきた、安心・安全・楽チンの6万2千ハーツの依頼。


依頼主の身元も2人が“リアの為に”保証するくらいだ、ちゃんとしてるに違いねぇ。


実はヤベェ依頼って事はねぇはずだ。


依頼の内容だけ見ても、ヤバそうな要素は1つもねぇ。


ダルも大体同じ様に考えたんだろう、しばらくの沈黙の後に、


「──そうか」


と口にする。

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