第87話

いぶかる俺をよそに、ダルが ああ、と一つ頷く。


「あのウェイトレスを募集してる?」


「そう、そのカフェだ。

そこの保存庫で、この頃どーも食料が食い荒らされてるらしい。

ネズミかリスか、まぁそんなトコだろうってのが店主の見立てだが、カフェは忙しくて人手も足りねぇ。

それに構ってる余裕がねぇんだな。

だが、ネズミやなんかを放っておくのも問題アリだろ?

そこでこの依頼って訳だ。

ネズミだかリスだか、とにかく食料ドロボーを捕まえるか、追い出すかして保存庫をこれ以上荒らされねぇ様にしてほしいってのが今回の依頼だ」


「ネズミやリスなら得体のしれないヘンな動物って訳じゃないし、とりあえず追い出すだけでいーんだから危険な要素は1ミリもないだろ?

しかもなんとこの報酬が6万2千ハーツなんだ!

この依頼内容ならフツー1万ハーツももらえるかってトコなんだけどさ、まさにおいしー依頼だろ?」


うきうきしながらクアンの奴が言う。


そいつに……俺は思わず眉を寄せた。


ネズミやリスを追い払うのに、6万2千ハーツ?


美味しすぎるにも程がある依頼だ。


絶対ぇ何か裏がある。


半ば確信しつつ思った俺と、ダルも同じことを思ったらしい。

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