第84話

◆◆◆◆◆



俺は犬カバを抱いたまま静かにダルの部屋の前で聞き耳を立てていた。


閉め切り損ねたらしく、わずかに開いたドアの隙間からダルやラビーン、クアンの姿が見える。


最初に口を開いたのはダルだった。


「──それで、私に話というのは?」


やんわりとダルが聞く。


それに ああ、と勢い込んで返事したのはラビーンだ。


「実をいうとな──…俺ら二人、君の姉さん……リアちゃんの事を、心底心配してんのよ」


ラビーンが深刻そうに言うのに……俺は思わずいぶかしんで眉をひそめた。


「ほら、今回のギルドの依頼。

そう害はねぇと思って、俺らリアちゃんを止めなかったろ?

けど実際にはリアちゃんはぶっ倒れちまって、二週間近くも寝込むことになっちまった。

俺もクアンも責任感じちまってなぁ」


しみじみと、ラビーンが言う。


それに口を開いたのはダルだ。


「だが、あれはリア自身の意思で動いた事だ。

二人が責任を感じる必要はないと思うが」


やんわりと、口調も優しくダルが言う。


それに「いや!」と勢いよく立ち上がったのはクアンだ。


「俺らがあそこで意地でもリアちゃんを止めていれば、リアちゃんをあんな辛い目に遭わせずに済んだんだ!」

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