第78話

『ブッフ』


鼻で、笑いやがった。


思わずカッチーンと来て、俺は言う。


「はっ、はは……。

おーいダル、こいつこのままふん縛って丸焼きにして食っちまおーぜ。

きっと店主も許してくれるって」


片頬をヒクつかせながら冷静に言った俺に、ダルが呆れたように「そんな訳がないだろう」と止めてきやがった。


「この子に悪気はないのだから、ちょっと笑われたくらい、我慢しろ」


言ってくる。


俺は全力で抗議した。


「ちょっと笑われたくらいだぁ?

このムカつく笑い、悪気ありまくりだろ!?

見ろよこいつ、もう俺をムシしてミルク飲み始めやがった」


ビシッと犬カバを指差して訴える俺に、ダルが「リッシュ、」とたしなめるように言ってくる。


くっそー…。


ダルのやつ、犬カバの肩ばっか持ちやがって……。


イラつきながら犬カバを見ると、犬カバが口の端だけを器用に上げて、俺を完全にナメた笑いをしてから


『フッ』


と鼻で息をついて、またミルクをなめ始める。


……こいつ……マジでそのうち丸焼きにしてやるぜ。


俺の剣呑な表情を見てか、ダルが軽く咳払いをして言う。


「──とにかく。

見世物屋の店主にはぜひリアにと言われているんだ。

お前だって飛行船を取り戻したり、借金を返すのに少しでも稼ぎが欲しい所だろう?

この子は案外大人しいし、どうやら賢そうだ。

私が言って聞かせてからはきちんと言いつけを守って、この家の中で大人しく過ごしてくれているし……」

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