第77話

ダルは……俺が席に座った所で一瞬言葉を詰まらせたみてぇだった。


こほっ、と小さく咳き込んだ。


俺は……思わず心配になって、自分の腕の所を くん、とする。


俺の中では臭いは取れたつもりだが、まだ完全じゃねぇのかもしれねぇ。


ダルは結局そこには一言も触れず、声をかけてきた。


「──具合はどうだ?少しは良くなったのか?」


聞いてくる。


俺は軽く肩をすくめてみせた。


「まーな。大分いいぜ。

それより、俺まだ臭ってんのか?

どーも鼻がイカレちまって、自分じゃよく分かんねぇんだよ」


問うとダルはわずかにまばたきしながら視線を逸らす。


「……まぁ、大丈夫じゃないか?」


感情を込めないまま、言ってくる。


しれっとした表情だが、この様子じゃまだそこそこ臭ってんだろう。


ったく、なんつー強力な屁だよ。


呆れ半分、ムカつき半分にダルの足元にいる犬カバを見る……と、犬カバがそれを察知したのか、ピタと動きを止めてぐりんと俺の方を振り返った。


俺がギクリとして体を強ばらせる中、犬カバがじっと俺を見上げてくる。


下から上へ、一通りこの俺、『リッシュ・カルト』の姿を眺め尽くしてから。

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