第76話

◆◆◆◆◆



およそ2日半ぶりのシャワーは最高だった。


初めの内はほとんどヘロヘロのまま壁に手をついて頭からシャワーを浴びるのがやっとだったが、勢いよく湯を出して、ついでに泡もたっぷり使って3度も洗ったんであのひどい臭いはかなり取れた(はずだ)し、よーやく頭もすっきりしてきた。


服も臭いのついてねぇ“リッシュ”のを着たし、かなりさっぱりした。


俺は元・ここの住人の物らしいタオルでわしわしと頭を拭いて、ふー、とやっと息をつく。


湯気で曇りかけた鏡に、俺のいかにもすっきりした顔が映る。


まったく、えらい目に遭ったもんだぜ。


まさかあんな犬カバの屁にやられて、この俺が2日も寝込んじまうとは。


さて、あの犬カバどーしたもんかな。


ここで飼ってやりてぇ程かわいいとは一ミリも思わねぇが、ダルの話によるとここに置いて軽ーく世話してやるだけで、まあまあいい報償金を貰えるとか。


俺の目指す楽して一攫千金……とはいかねぇが、楽してある程度の金を戴けるってのは、まあまあおいしい話ではある。


俺は頭をポリポリ掻いて考えながらリビングの方へ向かった。


ダルは、リビングの椅子に座って待っていた。


俺が来たのに気づいたらしく ちら、と目を向けてきたが、口元に人差し指を一本立てて しー、と身振りで示してきた。


見ればなるほど、ダルの足元には、あの犬カバがこっちに尻を向けて左右に尻尾を振っている。


こっからじゃ見えねーが、ミルクでも飲んでんだろう、ピチャピチャと小さく音がしていた。


俺は嫌~な顔でそいつを眺めてから、抜き足差し足で迂回してダルの正面の席に座る。


せっかく臭いが取れたってのに、また屁でもぶっかけられたらたまんねぇぜ。

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