第75話

「まぁ、花自体には何の咎もないのだからそう言わず受け取ってやれ。

二人ともとても心配していたぞ」


「ヤローに心配されてもこれっぽっちも嬉しかねーんだよ……」


げんなりしながら言うと、ダルが一つ肩をすくめた。


俺はそんなダルを見ながら言う。


「……そーいや犬カバどーした?

つーか俺、どんくらい寝てたんだ……?」


記憶が飛んじまって、全く見当がつかねえ。


窓から見える外の空色で、もう一日が終わるって事は分かるが。


俺の視線につられて、ダルも外の景色を眺める。


「2日と、半日くらいだ」


さらりと言ってくる。


げっ、2日もこの臭ぇ体のまま寝込んでたのかよ。


何だか一層気が滅入ってきた。


「あの犬カ………あの子の事だが……」


言いかけたダルの言葉を遮って、俺はパタパタと手を振り、よっこいせ、とベッドに肘をつきながら起き上がった。


頭がクラクラしやがる。


思わず額に手をやって床に足をついて立ち上がり、俺はふらふらと、部屋の戸の方へ歩き出した。


「──リッシュ……?」


心配そうにダルが問いかける。


俺はダルに背を向けたまま手をひらひらさせて答えた。


「悪ぃ、とりあえず、フロ行ってくる。

話は後だ」


でねぇと頭が働かねぇ。


俺はふらつく足で階段を降り、風呂場へ向かったのだった。

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