第73話
次に目を覚ますと、少し開いたカーテンの隙間から夕日の残り日が部屋に差しているところだった。
部屋に差す夕日がゆっくり細って、段々薄闇へと変わっていく。
物音一つしねぇ静けさだった。
臭いは……当然ながら消えちゃいねぇ。
目を細めたまま鼻にシワ寄せて くん、とする。
鼻が利かなくなったのか、この臭いに馴れちまったのか──はたまた少しはマシなくらいに臭いが薄れたのか、そんなに気持ち悪い感じはしねぇ。
怠く思いながらボーッと目をしばたく……と、すぐ脇のサイドテーブルの上に黄色と水色のちょっとした花束が飾られているのに気がついた。
それにいくつかの手紙も置いてある。
「……んだ、こりゃ……?」
元気なく、だらりと手だけ伸ばしてその内の一通を掴む。
封筒の表には、大きく太い不器用な文字で
『リアちゃんへ』
と書いてある。
ピロ、と裏を返すと、これまた同じ下手な字で
『あなたを想う ラビーン・オーガストより』
とあった。
俺は……一気に心がくじけて、ぐったりと手紙を持った手をそのままベッドに下ろした。
と、丁度そのタイミングで コンコン、と部屋の戸が静かに二度、ノックされる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます