第73話

次に目を覚ますと、少し開いたカーテンの隙間から夕日の残り日が部屋に差しているところだった。


部屋に差す夕日がゆっくり細って、段々薄闇へと変わっていく。


物音一つしねぇ静けさだった。


臭いは……当然ながら消えちゃいねぇ。


目を細めたまま鼻にシワ寄せて くん、とする。


鼻が利かなくなったのか、この臭いに馴れちまったのか──はたまた少しはマシなくらいに臭いが薄れたのか、そんなに気持ち悪い感じはしねぇ。


怠く思いながらボーッと目をしばたく……と、すぐ脇のサイドテーブルの上に黄色と水色のちょっとした花束が飾られているのに気がついた。


それにいくつかの手紙も置いてある。


「……んだ、こりゃ……?」


元気なく、だらりと手だけ伸ばしてその内の一通を掴む。


封筒の表には、大きく太い不器用な文字で


『リアちゃんへ』


と書いてある。


ピロ、と裏を返すと、これまた同じ下手な字で


『あなたを想う ラビーン・オーガストより』


とあった。


俺は……一気に心がくじけて、ぐったりと手紙を持った手をそのままベッドに下ろした。


と、丁度そのタイミングで コンコン、と部屋の戸が静かに二度、ノックされる。

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