第68話

俺はダルに倣って静かに少し頷くと、そろそろとその場から足を退いた。


ゆっくりゆっくり、犬カバがビビって逃げ出したりしねぇ様に。


ダルも物音を立てねぇ様にゆっくりその場から立ち上がると、俺の後に続く。


俺とダルがそうやってすぐ近くの建物の影に隠れた……所で。


ハッとした様に犬カバがきょろきょろ顔を動かし、辺りの様子を伺い始めた。


どーやらミルク皿にしばらく気を取られてて、俺らがいなくなったのにも気がつかなかったらしい。


犬カバが、それでも くんくん、と鼻っ面を地面にやりながら(どーやら警戒しながら)ミルク皿に近づいていく。


俺はダルに目線で合図してから、建物の後ろを回り込んで、そのままダルがいる方とは反対側の建物脇に出た。


丁度、俺が犬カバの背後を、ダルが前方を陣取る位置取りだ。


犬カバは、大人しくミルク皿に辿り着いたらしい。


こっからじゃ尻しか見えねぇが、その尻がうきうきと、右に左に小さく動いてるとこを見ると、とうとうミルクを飲み始めて上機嫌になってるらしい。


俺は様子を見ながらゆっくりとそんな犬カバの後ろ姿に近づいていった。


そして、未だにミルクに夢中になってる犬カバの真後ろまで来ると。


ガバッと勢いよく犬カバを両手で掴み上げた。

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