第64話

◆◆◆◆◆


「…おーい、犬カバやーい」


やる気なく両頬に手をついて、ついでに近くにあった石段の端に座ったまま、声をかける。


旧市街のちょっとした広場の、これまた端での事だ。


俺の足元には皿に注がれたミルク。


皿は俺の家(に昨日なった場所)から。


ミルクはここへくる来る途中の、歩き売りしてるチビガキから買った。


子供は鋭いか?とも思って少し警戒したが、何の事はねぇ。


マセたガキで、「ねーちゃんキレーだな。今度一緒にお茶しよーぜ」なーんて言ってきやがったから「そのうちにね」と適当に返して笑いかけてやったら、ミルク代をちょっとだけ安くしてくれた。


それで手に入れたミルク片手にそこらの狭い所を中心にそろそろと探し歩いてはみたが。


「~…見つかんねーなぁ…」


一向に見つかる気配がねぇ。


っつーかネズミ一匹、虫の一匹すらいねーんじゃねーかってくらい静かなんだよな。


見世物屋の店主の話じゃ、あの犬カバは静かな場所を好むって事だったし、探してみりゃあこの辺は狭い所もたくさんある。


どっかにいそうだとは思うんだが。


「カサリとも言わねーんだもんなぁ…」


初めのうちは結構真剣に探してたが、そこら中歩き回って探しまくったんで、疲れちまった。

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