第61話

俺は犬カバを憐れむように……と見せかけつつ、臭いを少しでも避けて考え事に集中する為に……自分の口元に手を当てながら考えた。


もし店主のいう通り、犬カバが静かで狭い場所に逃げようと思ったら、店を出て向かうのはどの方向か。


人通りが多くてガヤガヤしてる市街地よりは、人気のない廃虚同然の旧市街に向かうんじゃねぇか?


好物のミルクはねぇだろーが、狭い場所ならいくらでもあるはずだ。


そもそもあんな目立つピンク色の不思議な生物が市街地をうろついてたらそれだけで噂が立ってるはずだ。


ちらっとダルを見ると、こちらも同じ様な考えを持ったらしい。


店主へ向かって尋ねた。


「この一日半でその子を目撃したという話は街で一つも出なかったのか?」


ダルの言葉に店主が眉の端をポリポリ掻きながら「ええ、一つも」と弱った様に言ってくる。


俺は、さっきから漂う臭気に鼻が曲がりそうになりながらも口元から手を離し「大体のお話は分かりました」と告げた。


「ご協力ありがとうございます。

きっとすぐに犬カバちゃんを見つけてきますわ」


おまけでにこっと微笑んでやると…店主がとろけそうな表情で「よろしくお願いします」と返したのだった。

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