第58話

どれどれ、と見上げるまでもねぇ。


パッと見にもボロそうな木の掘っ立て小屋に、墨で書かれた『見世物屋』の木看板。


建物の位置的には市街地と旧市街のほぼ間って場所なんだが、雰囲気から言うと完璧に旧市街の建物だ。


──いや、もしかすっと旧市街の建物の中でも一番ボロい建物がこれなのかもしれねぇ。


奥行きがどんだけあるか正面からじゃよく分からねぇが、とりあえず横幅は狭い。


ダルが何の躊躇もなく見世物屋の戸をキィ、と開く。


「すまない。ギルドの依頼を請けた者だが──」


店の奥へ声をかけながらダルが中へ入っていくのに合わせて、俺もゆっくりとその後につく。


店の中は、少し意外だが外より傷んじゃいねぇ。


案外しっかりした木の床と壁。


奥にはつやつやした木製のカウンターがどっしりと陣取っている。


掃除も行き届いてるみてぇだ。


遠目に見ただけだがカウンターはきれいに磨きあげられてるみてぇだし、床にはワックスがかかってんのか妙にピカピカと輝いてる。


入った時は誰もいなかったカウンターだが、


「はいはいはい」


ダルの呼びかけに、カウンター奥の戸が開いて奥から一人の小男が出てきた。


50代くらいの背の低い男だ。

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