第55話

俺の一億ハーツと比べると、かなりもの足りねぇ報酬料だ。


まぁ、害の無さそうな動物だし、うまく捕まえられりゃ楽でまずまずの報酬だが。


と、後ろから(まだいたらしい)ラビーンが口を挟んできた。


「おいおい、マスター。

この動物、確か──」


言いかけた先で。


マスターが無愛想にラビーンを見た。


「関係のない奴は口出し無用だよ。

あんたはさっさとリッシュ・カルトでも捕まえてゴルドーの奴に差し出すんだね」


ビシリとマスターが言うのに……ラビーンは、かなり何かを言いたそうに俺を見て──そうしてうなだれるように頭を垂れる。


そうして俺に「リアちゃん、くれぐれも気をつけてなぁ」と言い残し、クアンを引き連れギルドからのそのそと出て行く。


途中何度も俺に何かを言いたそうに振り返っていたが───。


「さっさと行きな!

いつまでもノロノロしてんじゃないよ!」


とのマスターの叱咤に、最後は慌てて出ていった。


~なんだぁ、ありゃ。


ま、ラビーンの事はよく分かんねぇな。


それより依頼だ、依頼。


俺はダルと目を見合わせる。


ダルは静かに依頼の紙の絵を見る。


そうして、俺をちらと見て頷いた。


請けてみるか、ってトコだろう。


俺もまあ依存はねぇ。


俺はマスターに向かって言う。


「──じゃあ、この依頼を請けることにします」


言うと──マスターが「そうかい」とあっさり承諾する。


「捕獲したらモノは直接依頼主に手渡しな。

報酬はここに受け取りに来ること。依頼の報告を兼ねてね。

話は以上だよ」


あっさりと言って終わらせる。


よし、とりあえず初仕事、だな。

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