第51話

「依頼をしに来たんじゃなくって、請けに来たのよ」


俺はにっこり営業スマイルのままダルの後ろに回り、その両肩にポンと手を置いた。


「うちの弟のダルクがギルドで仕事をするっていうから、そのお手伝い。

ダルちゃんったら立派ですごいギルドの冒険者になりたいみたいで、依頼も一獲千金級の物を狙ってるの。

私も手伝わなきゃって思って~」


ニコニコしながら言う中、ダルがびっくりしたように俺を見上げてくる。


「なっ……リッ……」


リッシュってダルが言いそうになるのに、俺は言葉に被せるように続けた。


「両親を早くに亡くしたから、私一人でこの子を育てて来たんだけど、この頃はね、姉さんに苦労かけたくないって言うのよ~。

あんまり危ない依頼だと心配だし、ついてきちゃった。

それに私にも手伝えることもあるんじゃないかと思って~」


よくもまぁ、こんだけ口からでまかせが出たもんだ。


自分で自分の舌を誉めてやりたくなるぜ。


ま、こうやって公言しときゃラビーンたちもそんなに不信には思わねぇだろ。


ダルには悪ぃけど、俺の請ける依頼、手伝ってもらうぜ。


まぁ一人より二人っていうし、男二人で請ける依頼ならちょっとハードな依頼でもこなせるだろ。


報酬は5・5なら文句もねぇはずだ。

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