第42話

なんて思ってると。


「そういえばリ……」


ダルが言いかけて俺の姿を見る。


俺もつられて自分の姿を見た。


火事の気配に慌てて出て来たもんだから、髪はボサボサ、昨日の女装っ気もまったくない。


寝巻きがわりに普段着を着て寝たから、本当に普段の『リッシュ・カルト』の姿だ。


ま、いつもは髪くらい縛っとくけどよ。


俺はパタパタと手を振って見せた。


「あー、リッシュでいいよ。

これ食ったらまた女装すっから、そん時は『リア』で頼む」


言うとダルが「分かった」とうなづいた。


「リッシュ、借金を返すあては考えたのか?」


言ってくる。


俺は…思わず嫌~な顔でダルを見た。


「~言ったろ。

とりあえず、『リア』で居続けてるうちは逃げて逃げて逃げんの。

大体ゴルドーのやつならともかく、その辺の賞金稼ぎくらいならあの素敵変装で十分やり過ごせるだろ。

金の手配は、まぁ気が向いたらおいおいな」


言うと……ダルが、またあのおっそろしく冷ややかな目で俺を見る。


「……な、なんだよ?」


「少しは借金をどうにかしようという気はないのか


言ってくるのに、俺は思わず口を曲げる。


サラダの菜っぱをフォークで刺して口にやりながらテーブルに頬杖つく。

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