第39話

ドクドクバクバクと俺の心臓が激しく鳴る。


ダルも同じだったんだろう、しばらく二人、無言のままそこに突っ立って水浸しの消し炭を見つめていた。


俺は……やっとのことで口を開く。


「~ダル、」


「………」


ダルは何も言ってこない。


俺は1つ唾を飲んでから続けた。


「何やってんだよ?」


「…………朝食を、作ろうと思って……」


ダルが消え入りそうな震えた声で言う。


実際顔色も真っ青だった。


俺は「おいおい」とパタパタ手を振る。


「あの消し炭が朝食かよ?

つーか んなトコでぼや騒ぎなんか冗談じゃねぇぞ。

俺はお前と違って追われる身なんだからな。

目立ちたくねぇの!分かるか?」


「……分かってる。

すまなかった」


素直にしおらしく謝ってくる。


俺はやれやれと息をついてフライパンの中の消し炭へ目をやる。


「……これ、スクランブルエッグか?……形からして」


軽く推測して問うとダルが無言のままこくりと1つ頷いた。


俺は目をぐるっと一周回して放心状態のダルの手からフライ返しを取った。


「~ったく、いーからお前は座ってな。

俺がほんとの料理ってモンを見せてやるよ」

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