第38話

くん、と俺の鋭い鼻が、何か異様な臭いを嗅ぎ付けた。


パッと一気に目が覚める。


何かが焦げる臭い。


まさか火事か!


俺は慌てて起き上がり、部屋のドアを開ける。


正面にあるダルの部屋の戸はきちんとしまっていた。


が、煙が出てる気配はない。


むしろこの臭いは階下からだ。


「~おいおい、じょーだんじゃねぇぞ!」


パタパタと裸足のまま階段を転げるように降りる。


そうして臭いのする方を──リビングと続きになっているキッチンの方を向く。


そこに立っていたのは、なんとダルだった。


「~おい、ダル!お前そこで何やって……!」


ぐいっとダルの肩を掴んで臭いの元を見る。


そこには………


「………んだ?コリャ」


フライパンの上に乗った、消し炭みてぇな何かが、まだこれでもかとばかり火にかけられていた。


ダルの手にはフライ返しが。


俺がダルと消し炭を交互に見て、口を開こうとした

……所で。


ボワッといきなり消し炭から火柱が上がった。


「きゃっ!」


「のわっ!?」


ビビって俺はすぐにコンロの火を止め、ついでに近くにあったコップの水を消し炭から上がった火にかける。


消し炭から上がった火はジュウーッと音を立ててあっさり消えた。

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