第22話
「──確かに 私はここの人間じゃないわ。
ついさっき、たまたまここに忍び込んで、ちょっと色々見て回ってただけ。
そりゃ、ちょっとは何かお金になるものがないかなーとは思ったけど、特にそんなものはなかったわ。
この辺りって、こういう、人の住まなくなった家がそのまま残ってるでしょう?
私、家もないし、お金もないし、困っちゃって。
ほんの出来心なの。
だから見逃して?」
なるべく目に涙を浮かべて、なるべく嘘のないように慎重に話す。
嘘はついてねぇ。
俺は確かに家と金に困ってるし、たまたまここに忍び込んで金目のもんを探した。
『ゴルドーに追われて逃げてきて』の一言がなかったってだけだ。
上目遣いにダルクに頼む。
こんな美人に涙目の上目遣いで言われたら、大抵の男はころっと許しちまう。
そっか~、かわいそーに。
安心しな、誰も責めやしねぇさ、ってな。
少なくとも俺なら絶対ぇそうしちまう。
実際、ダルクは、ほんの少しは俺に同情したようだった。
ふっと息をついて、開いたままのドアに半身を寄りかけて言う。
「──そうか。家も金も…」
どうやら期待以上に真面目に受け取ったらしい。
ラッキー!と思いつつ俺は、そっと目元を拭うふりをする。
さて今度はこっちが質問攻めにする番だ。
こいつは何でここに来たのか?
ゴルドーのことを知らないって言いはしていたが、そいつが本当なのかどうなのか。
ごくりとこっそり息を飲んで、俺は口を開きかける。
その、とたんに。
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