第19話

どくどくと、心臓が鳴る。


ガチャ、とドアノブが回された。


そうして、開く。


俺は意を決してそっちを振り向いた。


ドアノブを回したのは──女じゃなかった。


小柄で、帯剣してる、細身の……男。


っかしいなぁ。


俺の勘が外れるとは…。


思いながらも俺はビックリした風に…実際ビックリしてたが…男を見る。


見たとこ俺と同じか、一~二個下ってとこだろう。


黒髪にすみれ色の目。


まあまあの見た目でもある。


向こうも驚いたみてぇだった。


ま、確かにこんな謎の廃墟に人がいたんじゃな。


考えつつも俺は口に手を当てて口元を隠し、なるたけ高めの声でしゃべる。


「だ、」


まずは試しに一言。


ごくり、息を飲み込んで先を続けた。


「誰?」


案外イケそうだ。


男はさほど疑問を持たず、むしろ一瞬ギクリとしたように俺の方を見た。


しばらく固まって、俺をまじまじと見る。


俺は冷や汗が垂れそうになるのを必死で耐えた。


こいつがゴルドーの手先で、俺の変装を見破ったらどうなるか。


その腰に下げた剣でズバッと切られる。


俺は憐れに女装姿のまま死に絶えて、ゴルドーの元へ送られるって訳だ。


その時のゴルドーのバカ笑いが、はっきり目に浮かぶようだった。

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