第16話

とりあえず、すぐ手前の右っ側の戸を開けてみることにした。


相変わらずのふっかふかの赤い絨毯に、クリームの色地の小花柄の壁紙。


カーテンには上質そうな緑色を使っていた。


洒落たアンティーク調のドレッサーや、クローゼット…。


どうやらここは若い奥方か何かの部屋らしい。


~ってことはドレッサーの中には宝石付きの指輪やアクセサリーがたんまり……!


ってな展開なら良かったんだが、実際はそうじゃなかった。


あったのは口紅やらなんやら、訳のわかんねぇ化粧品と、道具の数々。


さっと次の引き出しを開けるが、そっちにあったのもブラシとカーラー、ピンに、髪飾りの花のレプリカ。


そんなもんだった。


金目のもんとは言いがたい。


念のためにドレッサーの正面に立ってたクローゼットの方も開けてみる。


そこにはクローゼットいっぱいに、今の若い女が着ててもおかしくはないデザインの服が入ってた。


ワンピースに、シャツ、スカート…。


服の趣味からいうと、わりかし清楚系だったのかもな。


けど肝心の金目のもんは、やっぱりどこを探しても見当たらなかった。


はあっ、と悲痛に息をついて、俺はクローゼットを閉めてそいつを背に座り込む。

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