第5話

◆◆◆◆◆


どれだけの間そこでそうしていただろう。


ミーシャは、ジュードの剣を抱いたまま階段に座り込み、ただただじっとしていた。


ジュードは、来ない。


外の音も、何も聞こえない。


暗闇には目が慣れたが…それだけだった。


父や母、二人の兄、そして、ジュードの生存さえ定かではない。


──一体、何が起こったの……?


内乱だったのか、それとも敵国が攻めてきたのか?


ミーシャには分からなかった。


ここでじっとしていても、仕方がないことも分かっている。


けれど、どうしてもこの場を離れたい気がしなかった。


怖かったのだ。


それまでの全てを切り捨てて──見捨てて、それでもどこへ行くというあてもなく、未来さえも見えない。


自分が、こんなに臆病だったなんて。


ぎゅっと剣を握りしめる。


ジュードは、どうして剣をミーシャに託したのだろう。


確かに前は、二人の兄たちや、騎士たちと同じように剣を振り回し、戦ってみたいと思っていた。


けれどそれは練習でだけのことだ。


自分自身の身を守る為に、人を斬ることではなく……。

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