第25話 ふたりの門出

 夏も終わり

 もみじの色が真っ赤に

 色づいてき始めている

 そんな秋の気配を

 感じる頃


 愛は

 私自身が自分の愛に

 誇りを持てなくなったら

 終わりだと思った


 その夜、愛は

 今思っている

 正直な気持ち等を

 天斗に真っすぐに伝えた


 そしたら天斗は

 『離婚届けいつでも

 持って帰ってやるわ!』

 って

 切れて激怒した


 それから

 一か月が過ぎた…が

 一向に天斗は離婚届けを

 持って帰ってはくれなかった


 愛は仕事から帰って来た

 天斗にハッキリ尋ねた


 『離婚届けは

 いつ持って帰って

 来てくれるの?』


 天斗は

 『うるさいな!

 わかったわかった

 来週にでも

 もらって来てやるわ』と

 かなり投げやりな口調で

 言ってきた


 愛は下を向いて

 黙っていた


 天斗は

 『さっきまでの

 威勢のいい

 お前はどこに 

 行ったのか?』とか

 

 『自分こそ離婚届け

 もらって持ってこいや!

 もらってきたら

 いくらでも

 ハンコでもなんでも

 押してやるわ!』


 天斗の暴言は

 吐き出し始めたら

 止まらない…

 

 愛の事を

 打ちのめしたくて

 たまらなくなって

 いるんだろう

 

  ―気がすむまで言わせよう― 


 愛はうつむいたまま

 ずっと天斗の暴言を

 じっくり聞いていた


 天斗も長い時間

 暴言を言い続けて

 疲れたのか

 眠ってしまった


 愛も眠ることにした



 夜朝、目が覚めて

 起きたら…

 天斗は出かけて居なかった


  ―今でしょ!!

     愛はそう思った―



 同意見だね!!

 ココロが愛の背中をさらに

 押してくれた


 愛はすぐさま

 実家に向かうべく

 階段を足早に降りた


 まだ外は真っ暗で

 愛の両親も

 寝ている頃だ


 だけど愛はあえて

 そんな非常識な

 時間帯だからこそ

 今だ!!と

 思ったのだ


 愛はいきなり

 部屋のドアを

 開けたと同時に


 赤子のように

 『わんわん わんわん』

 泣きわめまくった


 両親は物凄く

 驚いていた


 『なにがあったの?』って

 そばに母が来てくれた


 ヒックヒックッ……


 ゆっくり話して…

 と母も父も愛の話を

 聞こうとしてくれた


 愛は今までこんな事が

 あったんだとか…

 今まで結婚生活19年、一度も

 愚痴ったことがなかったので

 機関銃のように

 長々~早口で話が

 止まらなかった…


 両親はずっと静かに

 うんうん、そうなのね…

 って聞いてくれた


 一通り話終えたところで

 母が一言こういった


 『あなたは

 江戸時代の女か!!』

『もういつ離婚したいって

 言ってくれるのか

 待ってたのよ!!』

「ようやく決心を

してくれたのね』


愛は全く予期しなかった

言葉を母から言われて

びっくりしてしまった

そして

ほっとした


もういつから

自分のこういう素直な

気もちを

吐き出せてなかったのか?

思い出せないぐらいに

愛はひとり

ため込んで生きて来ていた


両親は

義理両親の元に話に

言って来てやる!!って

力強い言葉を

言ってくれた


愛はありたっけの

エネルギーを使ったのか

疲れ果てて

眠ってしまった…


愛が寝ている間に

両親は、義理両親に

『離婚』の話を

してきてくれていた


天斗も

天斗の両親から電話が

かかって来たみたいで

自分の両親の所に

今から行くって


出掛ける間際

天斗が私にこう言った


『愛ならやると思った』って


夜帰って来たので

天斗に愛は


『あなたなりに

 結婚生活を精一杯

 やって来たのなら

 その自分に

 誇りをもって行ってね』

『これは別れというより

 ふたりの門出の旅立ちだから』


天斗は泣いていて

愛のこの言葉は

聞こえてない


愛は愛の為に

言いたかっただけだから


結局、天斗との結婚生活って

人数は二人だけど

ふたりで共にでは

なかったなぁ~って

思った


でも

本当に色んな経験を

させてもらった


血反吐を吐くぐらい

辛い事もあった


ここでもう

力尽きてしまうのかと

生命の危機を

感じたこともあった


絶望して

自暴自棄になって

この地を捨てようと

思った日々もあった


でも

天斗と出逢ったおかげで

今の自分を

もっと大好きだと思える

私に成れた

誇りを持てるように

成れた


天斗と憎しみ合った時期も

沢山あったけど

今の愛は

天斗にも

幸せになって欲しいと

心から思える


沢山の愛を

ありがとう


あなたはいつも

わたしに

僕は

忘れられることが

嫌なんだ


だから

愛が嫌がることを

することで


愛がいつまでも

僕から

嫌なことをされた

記憶が残るように

したいんだと


あなたの愛は

真っすぐでもなく

分かりやすいものでも

なかったけれど


あなたなりの

愛をくれたと

思っています


ふたりの門出に

乾杯


幸せに成って

愛の事なんか

忘れちゃってください


さようなら…








 



 





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~カルマメイト~愛と天斗の物語 勝美 あい @airintyan

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