第8話
昔、私には好きな子がいた。
幼稚園時代。私は、今とは逆で身体が小さく背の順でも一番前だった。
人の世とは残酷なもので、人より小さな身体は小さいなりに、それをネタにちょっかいを出されたりすることがある。(大きくても小さくてもからかわれるなんて
当時の私は内気な性格だったこともあり、からかわれても言い返したり先生に助けを求めることすら出来ず、ただいじめっ子が目の前から去ってくれるのを小さくなって待つだけだった。
でも、そんなある日。
「いじわるするの、やめなよ」
ひとりの子が間に入って助けてくれた。
同じ組ではない、知らない男の子だった。それ以降、同じような状況になると何処からか現れて助けに入ってくれたその子は、当時私にとってヒーロー的存在になった。
「だいじょうぶ?」
そう言って手をさしのべてくれる優しい笑顔を好きになって。
当時は自覚などなかったけれど、それが私にとっての初恋になった。
そして、その男の子こそが植草だった。
幼い頃の淡い恋心は、小学校が別だったこともあり単なる思い出として心の片隅に残っていただけだったけれど、中学に入って同じクラスに植草がいた時、すぐにあの男の子だと分かった。
植草は変わらない。中学生になってもあの頃の優しい笑顔のままで、私は次第に再び淡い気持ちを抱くようになっていた。
けれど、ある日。
クラスの男子たちが放課後、残って話しているのを偶然聞いてしまったことがあった。
「やっぱ女子は小さくて可憐なタイプがイイよなっ?」
「守ってあげたくなる的なヤツなっ。植草、お前は?」
「オレ?んーまあ、出来れば背は自分の方が大きいのが理想かな。頼られたいし、やっぱ守って包み込んであげたくなるようなコがいい」
「おおー」
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