第5話

「おう高山。お疲れっ。今帰りか?」

「あ、植草」


部活の帰り、偶然昇降口で植草と一緒になった。

植草も部活の帰りなのだろう。テニス部である彼の肩からは、ラケットケースが下げられている。

部活の大会などの話を振られるままに色々話していたら、帰る方向が一緒なので自然と一緒に帰る形になってしまった。

植草は昔から人付き合いが上手で、上手く話題を投げかけてくれるので、私的に一緒にいても気負いしない珍しいタイプの男子だ。誰に対してもそんな気遣いが出来る人なので、男子には勿論もちろん、女子からの人気も高い。


(宣戦布告してきただけあって、きっと明日植草は沢山のチョコを貰うんだろうな…)


ふと、そんなことを思った。

その時、胸の奥で何かがチクリと痛んだけれど、それには気付かないふりをした。



二人並んで歩いていると、後方から照らされる夕陽で長い影が二つ地に伸びていた。


(あれっ?植草の方が大きい…?)


改めてそんなことに気付き、さり気なく横を向けば、しっかり自分より上に彼の目線があった。驚きだ。中学時代は私の方が断然大きかったのに。


(背…伸びたんだなぁ…)


男子は高校生になってもまだ成長するという。植草も、まだ伸び盛りなのかも知れない。

ふと、こちらの視線に気付いたのか「なに?」と、植草が首を傾げた。


「ううん、何でもない。ただ…背、大きくなったなぁって」


そう言うと、植草は嬉しそうに笑った。


「だろ?もう、高山を抜いちゃったもんね」

「うん」


どんどん抜いてくれていいよ。切実に思う。

男の子は大きい方が断然いい。何より頼りがいがある。

そして女の子は小さい方が自分的には理想だ。その方が可愛いと思う。

私は、どうしたって伸びすぎてしまった。明らかに。


そんなことを考えていると、植草が続けて口を開いた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る