第4話
数日後。
バレンタインを翌日に控えると、男女ともそわそわ具合が見ていて半端なかった。廊下を歩いていても、部活に行っても、何処からか向けられる視線を感じて気になって仕方ない。
「今年はみんな、私なんかにくれなくて良いからね」
そう事前に言えたら、どんなに楽だろうか。
ある意味自意識過剰とも取れる言葉だけど、ここ数年渡されるチョコの数は本当に半端なくて。どう思われたって良いから予防線を張れるなら事前に張っておきたい。
…なんてことを思いつつも、実際に目の前に緊張気味に差し出される包みを突き返すことなんて出来るハズもなくて。
(結局、今年も受け取ってしまうんだろうな…)
そんな明日を思うと、やはり気が重い。
『お前、男に生まれた方が良かったんじゃないか?』
今まで何度言われたか分からない
普段から、この身長と見た目からそんな風に声を掛けられることは多々あった。確かに自分でも女らしい見た目だとは思ってないし、男子が女子をからかうネタとしては打って付けなんだろう。
でも、同性である女子までもが「カッコイイ」と騒いで、流石に告白とまではいかないものの頬を赤らめてチョコを渡してくるのは、どうなんだろう。
普通に友チョコとかなら、まだいいのだ。『友情の証』として仲の良い子と交換する分には。でも、実際は知らない子や後輩なんかの比率が多くて。
(女子高とかならまだ分かるんだけどな…。他に沢山の男子が居る中でどうして自分に?って思っちゃうのは仕方ないことだと思う)
それでも、好意を向けてくれるのを
(もっと、ポジティブに考えられれば良いんだろうけど。やっぱ無理…)
思わず、今日何度目か分からない溜息をついた。
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