第3話

「皆ヘタな男よりチョコ貰ってるお前のこと、羨ましくてしょうがないんだよ。リスペクトしてるんだって!」

「くだらないよ。私は別に欲しくて貰ってる訳じゃないのに…」


それなりにお返しもしなくちゃならないし。自分なんかの為にわざわざ買ったり手作りしたりして届けてくれる子たちには申し訳ないけど、正直面倒だというのが本音だ。


「んー。でも、同性に好かれてるなんて人徳だと思うけどなー。良いことじゃない」


『ただ単に男っぽいだけ』のどこら辺が『人徳』なの?そう思ったけれど言葉は出てこなかった。

植草があまりに穏やかに笑うから。


「それに、さ」

「?」


急に顔を近づけて話し掛けて来る植草を何事かと見上げる。すると…。


「実際、話題になってんだよ。そんなお前の本命貰う奴は、どこのどいつなんだって」


こそっ…と、そんなことを耳元で囁く。

その言葉に私はカッとなった。


「馬鹿じゃないのっ?どうせ、冷やかしでしょう?私みたいなやつがチョコ渡してたら、きっと皆で笑うんでしょ?面白がってるだけじゃないっ」


それは、ただの興味本位でしかない。男みたいな奴が一丁前に女ヅラしてチョコを渡してるとこを見て笑いたいんだろう。

自分でも自棄になっているのは解っていたけど、声を上げずにはいられなかった。意図的にからかった訳ではないのであろう植草には悪いけど。

だけど、植草は…。


「オレは、そうは思わないけどな。お前が誰かにチョコあげたって別におかしくないだろ?」


突然真顔になると、そんなことを呟いた。

そこで始業のチャイムが鳴り、植草は自分の席へとそのまま戻って行ったのだけど、残された私は何だか複雑だった。


(何で急に、そんな顔するかな…)


植草が見せた真面目な顔が、しばらく頭から離れなかった。


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