第8話
子猫のいる枝まで辿り着くと、実琴はそっと手を伸ばした。
だが、僅かに子猫まで手が届かない。
(もう少し身を乗り出せれば届きそうなんだけど…折れないかな?)
それがちょっと心配だった。
自分の重みで
そうして枝が揺れることで子猫が落ちてしまわないか、それさえも不安だ。
実琴は不安定な体制のままで出来る限り腕を伸ばすと、驚かさないようにそっと優しく声を掛ける。
「おいで。怖くないから…」
子猫がそれに応えるように、小さく「みゃあ…」と鳴いた。
「大丈夫だよ。今、助けるからね」
子猫が乗っているのとは別の枝に何とか手を掛けると、もう片方の手を思いっきり伸ばす。
(これなら届きそう…)
「ネコちゃんっ」
怯えるような子猫の瞳と視線が絡み合った瞬間、何とかその小さな身を手のひらの中へと捕らえた。
途端に、驚いたように僅かに手足をバタつかせる子猫だったが、実琴がすぐに自分の胸に抱えるようにすると温かさに安心したのか、すぐに大人しくなった。
「良かった…。怖かったよね」
実琴はホッとした様子で笑みを浮かべた。
だが、次の瞬間。
突然、ゴォーーッと唸る程の突風が吹き荒れた。
「きゃあッ!」
不意のことでバランスを崩した実琴は。
抱き抱えた子猫もろとも、木の下へと真っ逆さまに落ちていくのだった。
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