第17話
蒼は泣きじゃくる遥を落ち着かせる為、再び公園内へと戻るとベンチのある場所へ誘導した。
そして、隣で遥が泣き止むのを静かに待った。
公園内は未だ明るさはあるものの、いつの間にか遊んでいる子どもたちはいなくなっていた。
既に東の空は暗くなり始めている。この時間から夜へと変化していくのはあっという間だ。
暫くすると、遥が俯いたまま小さく呟いた。
「ごめんね……。泣いたりなんかして……困らせて……」
「いや。少しは落ち着いた……?」
優しく声を掛けると、遥は俯きながらもこくり……と小さく頷いた。
まさか、自分のことで遥をこんなにも泣かせることになるなんて思ってもみなかった。
昔のこととはいえ、遥にとってしまった自分の態度に心底後悔していた。
遥は何も悪くないのだ。
自分がただ、弱かっただけなのだから。
「遥は、もう……俺のことなんか忘れてると思ってた」
あれから、どれだけの年月が経ったか。その間に遥だって沢山の出会いがあった筈だ。
そんな中での自分の存在など、過去のほんのひとかけらでしかない。そう思っていたのに。
「忘れる訳ないよ……。ユウくんと蒼くんは、私にとって……この街に来てからの初めての友達だったんだよ。辛かった時、二人が一緒にいてくれたから今の私がいるんだよ……」
沢山泣いたからだろうか。少し鼻声になってしまった遥が小さく呟いた。
「そうか……」
周囲を見渡せば、あの頃と変わらぬ景色がそこにはあって。
蒼は懐かしさに目を細めた。
「いつも暗くなるまで……暗くなってからもずっと遊んでたよな。三人でさ……」
「うん」
遥もその言葉に顔を上げると、自分たち以外誰もいなくなった公園内を眺めた。
「懐かしいな。随分前のことなのに、ここは変わらないんだな……」
感慨深げに呟く。
遥がこちらを見たのが分かった。だが、視線を前に向けたまま言葉を続ける。
「でも、時が経てば人は変わる。遥は、あまり変わってなかったけど……俺は本音を言うと変わっていて欲しかった」
「え……?私……?」
「うん。俺のことも、ユウのことも……。もっと過去の物にしていて欲しかった。そうであれば、傷付けずに済むと思っていたんだ」
「蒼くん……」
「今日のユウとのことも
「現実から、逃げる……?」
「ああ。俺がこの公園に来なくなったのも、遥に合わせる顔がなかったのも……。全部、俺の弱さが招いたことなんだ」
『いえない。ハルカには……』
こんなこと言えるわけない。
『でも……どんなかおをして会えばいいの?』
隠し通せる自信がない。
……弱い俺は、遥から逃げた。
「遥を悲しませたくなかったのもあるけど、言えなかったんだ」
遥に視線を向けると、遥は大きな瞳を見開いて俺を見ていた。
「ユウが引っ越したというのは嘘だよ。ユウは病気だったんだ」
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