第6話
清香は夏樹にとって、何でも話せて頼りになる姉のような存在だ。
清香と親しくなったきっかけは、夏樹が熱で保健室へと運ばれた際に女であるという秘密を知られてしまった、ある意味ハプニング的なものからであった。
だが、清香は事情を知った上で、夏樹の想いを
家族を失い、秘密を抱えていることで他人との関わりを避けて過ごして来た夏樹にとって、そんな清香の存在は絶大で。
自分を偽らずに何でも話せる場所…。そして、清香の優しい人柄に影響を受け、夏樹は徐々に周囲にも心を開いていけるようになったのである。
それに、これは余談だが…。二人は高校で初めて出会った訳ではなく、実は実家が近所同士の顔見知りだった。
歳が離れていることもあり、あまり関わりはなかったのだが、夏樹の幼馴染みの姉が清香と親しくて、一度だけその幼馴染みに連れられて『近所のお姉さん』の家へ遊びに行ったことがあったのだ。
お互いにその友人を
でも、それらも含めて清香との出会いは、今の自分にとって必然的なものだったと夏樹は思っている。
大切にしていきたい、落ち着ける場所なのだ。
「…そう言えば、
さり気なく清香から振られた話題に、夏樹はミルクの入ったカップを両手に持ちながら素直に頷く。
「うん、一応…。昨日電話で…だけど」
そこまで言うと、清香は嬉しそうに笑った。
「ふふ、そっか。今部活はどこも大会続きで忙しそうだものね」
「そうみたいだね」
『雅耶』というのは、夏樹の実家の隣に住む幼馴染みの少年だ。
過去に、夏樹と清香を引き合わせたのも彼である。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます