第4話

成桜せいおう女学園は、その名の通り女子校である。


男子校から女子校へ。

その大きな環境の違いに多少の不安はあるものの、夏樹が何よりも心配なのは自分自身のことだった。

自分が女の子として果たして上手くやっていけるのかどうか。

それこそが、一番の問題点であり不安要素だった。


夏樹が以前『冬樹』であった時に、何故えて危険度が増す男子校を選んだのかというと、その理由は『女子がいないから』で。

同年代の女子を見ているのが辛くて、関わることから逃げたのだ。


『もしも、自分が夏樹のままだったなら…?』


そんなことを少しでも考えてしまう自分が許せなかった。

彼女達の中に『夏樹』の影がチラつくのが苦痛だった。


それは、女の子達に対する憧れもきっとあったのだと思う。

その中に入ることが出来ない自分を切り捨てる為に…。

憧れをも断ち切るように、自ら男子校を選んだ。


だが、実際に戻れることになるなど想定していなかった…というのが本音で…。


行動も、言葉遣いも、何もかもが男そのものの自分。


以前より少しだけ髪は伸びたけれど、どうしても『冬樹』の時の自分と何かが変わったとは思えなかった。



鏡に映る自分の制服姿を眺めながら、夏樹は小さく溜息を吐いた。


(…何か、やっぱり女装してる気分…)


どうしても見慣れない自分のスカート姿に、恥ずかしさを通り越して気持ち悪さしか感じない。


(最近よく、ニューハーフの人とかがテレビでバリバリのミニとか着こなしてるの見るけど、実際男として生まれて育ってきて、よく普通に着れるよな…)


それこそ尊敬に値すると思った。


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