第3話

彼女は特異な経歴の持ち主だった。


夏樹には、冬樹という双子の兄がいる。

二人は、二卵性双生児でありながら親も間違える程、そっくりな双子だった。

よくお互いに入れ替わって遊んだり、時には悪戯イタズラをしたり…。

とても仲の良い兄妹だった。


だが、そんな彼らが小学二年生の頃。ある事故が起きた。

両親と夏樹の乗った車が、崖から海へと転落したのだ。

そして、その場所の地形や天候などの不運が重なり、三人は行方不明のまま捜索は打ち切られてしまうのだった。


家族を失い、一人ぼっちになってしまった冬樹…。


だが、実はその冬樹こそが、事前に入れ替わっていた夏樹本人だったのである。


その事実を誰にも言えず、誰にも気付かれることなく、夏樹は兄が見つかることを信じて『冬樹』を演じたまま過ごしていく。

そして、無情にもそのまま八年という年月が経過してしまうのであった。



そうして『少年』は、高校生へと成長し…。


男子校である成蘭高等学校へと入学したことで、保健医である清香と出会うことになる。


その後、ある事件に巻き込まれたり、様々な出来事が夏樹ふんする冬樹の身に襲い掛かるが、ある時、事態は思わぬ急展開を迎えた。


何と、兄の冬樹が生きていたのだ。


そこを語るには、様々なドラマがありすぎて(?)簡単には説明しきれないのだが、にもかくにも、夏樹は無事に『少年』から『少女』へと戻ることが出来たのである。



そして、とうとう明日からは、夏樹として新たな学校生活がスタートする。


私立成桜せいおう女学園高等学校へと、転入することが決まったのだ。


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