第10話

「…お父様……っ」


アンリは屋上まで走って、ようやくそこで止まった。

塀の前までふらついた足で歩き、寄り掛かるように崩れた。


「…う…うぅ」


ためていた涙が一気に溢れ出した。


「そんな、そんな…。

お父様が亡くなったなんて…」


直接見たわけではないから、信じられなかったが…けれど

そういえば10日前。南の空が赤く染まったような…。

でもそれがまさかガーディアナだったなんて…。


(…!

誰か来る…)


階段を上ってくる足音に気づき、アンリは慌てて立ち上がり、涙を拭った。


「や…やぁ…」


その足音の主は、ついさっき会ったばかりの『マックス』という人。

姿を確認すると、視線を彼から外し、広がる景色に目を向けた。


まだ、目が赤く腫れている気がして、それを見られたくなかったから。

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