第40話

その夜からしばらく後の話だけど…。


イベントスクェアの会場入り口前に、特別展示場が設けられていたの。


「はあ…。

100組目のカップルが、特別仕様じゃないなんてな…」


一枚一枚貼られていく中、悔やんでいるあのカメラマンの男。


「モーグリ君が写らなければ…いや、私が間違って押さなければなあ…。

と、いけないいけない」


その事を振り切るように、男は大きめの封筒を取り出し、それにちょうど入る写真を一枚入れた。


「これを彼女さんに送ってやらないと」


それは失敗した“カップル100組目特別仕様の写真”。


「約束だしね」


わたしがあの時お願いしていた事はこれだったの。


男はペンを取り出し、表にサラサラ書き始めた。


「住所は…と、コスタ・デル・ソル―別荘行き、エアリス=ゲインズブール様…と。これでよし」


書き込み、封をして、入場口前に置かれたポストへと向かった。


これが届くの楽しみにしていたよ。もちろん。


でもね。


それをわたしがが受け取ることはなかったの…。






続く。

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