第39話

「…分かりました。

他のカップルさんと同じ仕様で撮り直しましょう」


エアリスと男の二人だけで話して数分後。

男は立ち直ったようだった。


「え?イヤ、オレはもう……」


「いいじゃない、クラウド」


クラウドの顔は赤い。


――さっきのこともあって、ヤになっちゃったのかな?

…まあ私も、あんな強引なのはヤだけど。


「今度のは『普通でいい』って。だから…やろう?」


「…そう…言うなら」


クラウドに何とか納得してもらって、わたしたちは再び並んだ。


「それじゃ行きまーす」


パシャ!


もう一度位置を合わせた男はシャッターを切る。

#

――2回目は。


最初の時みたいな自然な距離はとれず、少し離れて横に並んで“ぎこちない写真”になっちゃったけど。



「ふふ。

楽しかったね。クラウド」


「ああ…」


ターミナルに戻ってきたクラウドとエアリス。


「……なあ、エアリス。

さっき男と何を話したんだ?仕切り直しをお願いしてた割には長かったようだけど?」


「そうだった?

それよりクラウド。次はゴンドラ乗ろう?」


ごまかすようにエアリスはクラウドの腕を引き、強引に次のアトラクションに連れていった。


ナイショ。

だって言ったらきっと反対されるもの…。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る