第26話

その頃、テント席では。


「西園寺先輩…。蒼真先輩がこちらに来ていません」


困った様子の蛭田は、会長である西園寺に判断を求めた。


「なんだと?

競技の準備は生徒会役員がやる事になっているのに、どこで油を売っているんだ、あいつは」


「あ、ソウマいた!

あいつ、普通に選手として出る気よ!」


「本当だわ」


辺りを見回す椎名と呉羽。すると椎名が先に彼を見つけて指差す。


「蛭田くん。すまないがアナウンスで呼びかけてくれ」


「わかりました。

――生徒会役員の秋月蒼真さん。競技の準備がありますので一度テントまで来てください」


蛭田のアナウンスが終わると、入場ゲートではどっと笑いが出た。しばらくすると蒼真が出てきて、テントに向かってくる。


「いや~わりぃわりぃ」


言いながら、蒼真の顔はひとつも反省している様子はなかったが。


「貴様、体育祭の段取りは昨日も話をしただろう!

なぜあっさり忘れているんだ?」


「悪かったって!

ほら、最初は障害物だろ?準備しちまおうぜ!」


「話はまだ終わってないぞ、ソウマ!」


鬼のような形相の西園寺の話は長いと知っているからか、話を逸らそうと、競技に必要なものをテントから引っ張り出しはじめた。


「ソウマ先輩…ですから」


「く…っ。

反省会ではみっちり言ってやる」


この場での注意は諦め、生徒会役員は準備に取りかかる。アナウンス役の蛭田は、そのまま席に座り、


「大変お待たせしました。それでは、プログラムno.1は…障害物競争です」


ハラハラ?ドキドキ?の体育祭の始まりです。

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