体育祭・中編

第27話

◎美白男子◎



競技は滞りなく進んでいく。



「続いては、全学年男子の競技“美白男子”です。この競技は…」


呉羽の透き通るような声がグラウンド中に響き渡る。


「わくわくすんな、キリヤ」


「いや、そんなに…」


「中盤まで走ると、そこには小麦粉が入ったバッドがありますので、選手はその中からアメを探しあて、ゴールまで走ってください」


「え?」


「へぇ、だから美白か」


「冷静な反応してる場合じゃないだろ?」


「おもしろいならいいんだよ」


「えぇ~…」


顔が小麦粉だらけになるなんて嫌だな。ってか、なんで高校でそんな競技があるんだ??


霧谷は小さな声でブツブツ言っていた。


「シーナ、絶対わざと入れたよな」


★★★


競技に参加している生徒はどんどん減っていく。自分の出番は意外と早く回ってきた。


「位置について」


体育委員がピストルを上に構える。


「よーい、どん!」


バン!というピストルの音に、俺たちは走り出す。蒼真の方が速い。


負けるか!っと霧谷もスピードをあげた。


なんだかんだで、本気になっていた霧谷。賭けがあるから、ではない。蒼真に負けたくなかったのだ。



走り続けると、小麦粉があるところに来た。


「がふがふがふっっ」


蒼真は思い切り顔を突っ込んだせいか、小麦粉でむせていた。


(そんなに勢いつけなくたって…)


霧谷は蒼真の様子を見ながら自分も小麦粉に顔を入れる。粉のため、目は開けていられない。探るようにしていると、コロリと何が口に当たった。

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